平成13年(ワ)第15800号 損害賠償請求事件
原 告 野村 一也
被 告 今井 亮一 外2名
準 備 書 面 (4)平成14年1月22日 東京地方裁判所民事部第18部ろB係 御中
原 告 野 村 一 也 原告は,平成13年9月5日付け,被告ら答弁書中第3 被告らの主張 に対し,次の通り弁論する。
なお,この準備書面(4)は、左列に被告ら準備書面(平成13年9月5日付)を,右列に原告弁論を対応させている。
また,この準備書面(4)は,CD5にHTML形式としても収録する。
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被告ら答弁書 |
原告弁論 |
1 インターネットのBBSに書き込まれた発言が人の名誉を毀損するか否かを判断するに当たっては,問題の発言がなされた前後の文脈等に照らして,発言内容が不特定多数の第三者に理解可能か否か,当該発言内容が真実と受け取られるおそれがあるか否かを基礎とする必要がある。
加えて,言論による侵害に対しては,言論で対抗するというのが表現の自由(憲法第21条1項)の基本原則であるから,このような場合にも,一部の表現を殊更取り出して表現者に対して不法行為責任を認めることは,表現の自由を萎縮させるおそれがあり,相当ではない。
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1.被告今井による,影響力の濫用について (1)被告今井は,交通ジャーナリストとして広く認知されている。したがって,一般の閲覧者は,被告今井の発言に高い信憑性を持って受け取る,と解すのが自然である。例え,その表現に品位や根拠がなくとも,広く認知されたジャーナリストの発言は,強い影響力を持つのである。なぜなら,一般の人々は,複雑な事象や,分かりにくい事象を,客観的かつ公正に伝えてくれるのがジャーナリストであると認識しているからである。
(2)被告らの原告に対する表現方法は,品位がなく,原告を批判する表現には根拠がないか,または不明確であり,さらに“すり込み”と言わざるを得ない執拗な繰り返しが頻繁である。したがって,「一部の表現を殊更取り出している」とする,被告ら弁護人の主張は失当である。
詳細は準備書面()に記す。 |
2 本件各発言がなされたというBBSは,誰でも自由に発言することが可能であるから,被害者が加害者に対し,必要かつ十分な反論をすることが容易な媒体であると認められる。したがって,被害者の反論が十分な効果を挙げているとみられるような場合は,社会的評価が低下する危険性が認められず,名誉毀損は成立しないと解するのが相当である。
また,被害者が,加害者に対し相当性を欠く発言をし,それに誘発される形で,加害者が,被害者に対し,問題となるような発言をした場合には,そお発言が,対抗言論として許された範囲のものとして認められる限り,違法性を欠き,不法行為は成立しない。
インターネットのBBSに書き込まれた発言が人の名誉を毀損するか否かを判断するに当たっては,問題の発言がなされた前後の文脈等に照らして,発言内容が不特定多数の第三者に理解可能か否か,当該発言内容が真実と受け取られるおそれがあるか否かを基礎とする必要がある。
加えて,言論による侵害に対しては,言論で対抗するというのが表現の自由(憲法第21条1項)の基本原則であるから,このような場合にも,一部の表現を殊更取り出して表現者に対して不法行為責任を認めることは,表現の自由を萎縮させるおそれがあり,相当ではない。
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2.対抗言論について (1)本件事件の主たる舞台となった,本件掲示板Aおよび本件掲示板Bは,被告今井が主催する掲示板である。また,被告今井は,原告を侮蔑する表現によって,被告今井自身の優位性を周囲にアピールする手法を,ひんぱんに用いている。広く認知されたジャーナリストが,自ら主催する掲示板において,こうした手法を用いることは,相手を侮蔑する表現が容認される場所であることを,広報していると解すべきである。実際,被告今井の表現と同じくらい品位のない原告批判は,おびただしい数になった。したがって,原告が,被告らに対する対抗言論を行うには,公平性を欠いていることは明白だといえる。
なお,原告は,人格批判と受け取られる可能性のある文言を使ったことは1度もない。また,原告は,第三者の言動に対して,批判的な発言をするときには,常にその根拠を併記している。 (2)原告は,「(原告が)誹謗中傷している」ことを触れ込む被告今井に,その箇所を示すように促したが,被告今井はその箇所を示すことなく,執拗に「(原告が)誹謗中傷している」と繰り返している。
「誹謗」または「中傷」または「誹謗(・)中傷(の人)」を含む被告らの発言 H12/7/27,H12/9/9(3),H12/9/15(2),H12/11/7,H12/11/25,H12/12/3,H12/12/5,H12/12/9,H13/3/15(288),H13/7/1(1684),H13/7/8(1898),H13/7/2(1693),H13/7/2(1692),H13/7/7(G3795) 原告のどの発言が,被告今井を「誹謗」または「中傷」したのかを,明確に示すことを求める。 (3)原告は,「(原告が)捏造した」ことを触れ込む被告らに,その箇所を示すように促したが,被告らはその箇所を示すことなく,執拗に「(原告が)誹謗中傷している」と繰り返している。
「捏造」を含む被告らの発言 H12/8/30,H12/9/7,H12/11/7,H12/11/11,H12/11/22,H12/12/4(2),H12/12/4(3),H12/12/5,H12/12/19(2),H12/12/8,H12/12/9,H13/1/11,H13/2/14(88),H13/2/15(98),H13/3/15(288),H13/4/14(561),H13/6/30(1675),H13/7/4(1772) 原告のどの発言が「捏造」なのかを,明確に示すことを求める。 |
3 以上の観点からすれば,原告は,本件の各BBSにおいて,被告今*亮*(以下,被告今*という。)に対する事実無根ないし論旨不可解な誹謗中傷というべき投稿を「裁判ゲーム」,「模擬的陪審制裁判」などと称して続けた。被告今*および被告平*(以下「被告平*」という。)はこれに対する反論としてBBSに投稿しており,それは原告の投稿内容に対する公正な論評である。また,原告は多数の投稿をもって反論している。
したがって,被告今*お呼び同平*には,原告に対する名誉毀損の不法行為は成立しない。
また,そうである以上,被告*谷*之につき,損害の発生・拡大を防止すべき義務の懈怠・違反はありえない。
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3.
(1) 原告は論点を示し,その論点を展開した。〈準備書面〉
(2)被告今井は,原告が何度も繰り返し明示する論点に触れることなく,執拗な人格攻撃を繰り返した。
ア 「裁判ゲーム」
そもそも「裁判ゲーム」という文句は,被告今井の本のタイトルから抜粋したものである。また,原告はこの意味について何度も説明している。《甲11の3中N1003の2》《甲11の3中N1112》《甲11の6中N0106の1》《甲15の8》《甲42の14#4431》《甲11の4中N1128》《甲15の12》《甲36の5#914》《甲36の6#668》《甲36の9#1434》《甲42の14#4431》 イ 「模擬的陪審制裁判」
原告が,「模擬的陪審制裁判」という文句を使用したのは,平成12年11月12日発言での1度だけである。《甲11の3中》 そして当該発言において,原告は,「模擬的陪審制裁判」という文句を,「裁判ゲーム」の意味を説明するために用いたことが明らかである。 もちろん,当該発言において,原告が,「裁判ゲーム」の意味について説明したのは,被告今井の求めに応じるためである。 ウ 被告今井は,原告の説明を一切汲み取らずに,その文句だけを殊更取り出して,原告を批判の材料とした。《甲11の6中R0111の1》《甲36の10#1278》《甲36の13#1898》《甲36の5#1097》《甲36の9#1263》《甲36の9#1402》《甲36の9#1150》《甲36の9#1407》《甲36の9#1160》《甲42の11#3842》《甲42の11#3844》《甲42の5#2494》《甲47の2》
エ 以上のように,被告今井は,「裁判ゲーム」および「模擬的陪審制裁判」の意味を理解する気はなく,原告を批判する材料として,この2つの文言を利用した,と言わざるを得ない。
オ したがって,被告小谷は,損害の発生・拡大を防止すべき義務の懈怠・違反をした,とみなすべきである。
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4 よって,原告の被告らに対する本件請求は速やかに棄却されるべきである。 |
4 被告今井は,言行を一致させるべきである。
(1) 平成13年6月16日,被告今井発言より引用《甲36の9#1407》
今後、頭のおかしい人がネット上でつきまとい、それを現実の法廷へ持ち込むことは、これからどんどん起こってくる可能性があるように思います(すでにどこかで起こっているのかもしれませんが)。
今井が遊び半分で相手したため、今後の同種の訴訟に良くない影響を与える判例を残した、などということになっては困ります。 今後の同種の訴訟の先鞭となれるよう、きっちりやらせてもらいます。 (2)平成13年8月11日,被告今井発言より引用《甲42の11#3842》
少し読み進めると、さっそく例によって例の如く事実無根の決めつけが出てきて、「ありゃりゃ」と苦笑してしまいました。
妄想じみて論理的にムチャクチャとしか思えない言い分、につきあわされることになるのはちょっと閉口しますが、まあ、きっちりやらせてもらいます。 弁護士と相談して、「反訴」(民事訴訟法239条以下)とやらをやるかもしれません。 |
以上