甲第76号証

平成13年(ワ)第15800号 損害賠償請求事件

原告 野村一也

被告 今井亮一外1名

陳述書(4)

2003年11月9日

東京地方裁判所民事第18部ろB係御中

原告 野村 一也

 

原告は,以下の通り陳述する。なお,この陳述書(4)は,CD11にHTML形式としても収録する。

1 「批判」の類型について

ひはん【批判】
〔名・ス他〕物事のよしあしなどについて評価・判定すること。

はんろん【反論】
〔名・ス自他〕相手の議論に対して言いかえすこと。また、その議
論。「―の余地がない」

ちゅうしょう【中傷】

〔名・ス他〕根拠のないことを言い、他人の名誉を傷つけること。
「いわれなき―」

ひぼう【誹謗】

〔名・ス他〕そしること。悪口を言うこと。

(岩波国語辞典より)

原告の論点は明確であり,批判的な表現には常に「客観的な根拠」を併記している。つまり,原告の表現に「批判」はあっても,「誹謗・中傷」に属する内容は存在しない。<甲準備書面(5)>

一方,被告今井は,明らかに人格権を侵害する表現をもって原告の名誉を毀損した。<別紙1.被告ら各発言の名誉毀損部分一覧表><甲準備書面(6)>

また,原告がこれら被告今井による人格権侵害に抗議をしても<甲36-6#667>,これらを撤回または謝罪することはなかった。それどころか、同じような人格批判を繰り返している。<甲準備書面(6)>

さらに,原告が,被告今井に対し,表現の客観的根拠を要求しても,被告今井はこれを明示することはなかった。<甲準備書面(6) 第1>《甲準備書面(1)5のエ

その上に,被告今井は,本件訴訟においても,しばしば「中傷(客観的根拠のない批判)」を為している。《甲陳述書(1) 2

このように,被告らには,「批判(ないし評価)」の原理原則に対する認識が不足していると言わざるを得ない。

2 原告の損害について

被告今井は,原告の投稿数そのものが,対抗言論による違法性阻却事由を構成するかのように主張している。しかしながら,次の理由から被告今井の主張は失当である。

(1)対等な言論を行い得ない場所が舞台であった

被告今井は,“ジャーナリスト”という肩書きで,単行本,雑誌に原稿が掲載されており,またテレビ,ラジオにも出演している。そして,本件事件の主たる舞台となった被告今井が主催する掲示板(本件掲示板AおよびB)は,被告今井の「オフィシャルサイト」と銘打たれていた。著名人であれば少なからずファンや支持者がつくものであり,被告今井が主催する掲示板にも,多数の常連が集まっていた。《甲準備書面(1) 3

この掲示板において,被告今井は,原告を見下したセンセーショナルな表現をひんぱんに用いた。<甲準備書面(6)>

原告は,被告今井が惹起させた第三者らによる原告批判についても,対応せざるを得なかった。《甲陳述書(1) 8 イ》

なお,原告は,論点を明確にしようと努力し,討論の目的も明確であった。<甲準備書面(5)>

しかし,被告今井は,原告意見の本質に触れようともせず, 原告をきちがい扱いするような表現を続けた。この被告らの行為は,ジャーナリストの影響力を利用して,被告今井の支持者を巻き込み,原告にリンチを加えたといっても過言ではない。

以上のとおり,本件事件の主たる舞台となった被告今井が主催する掲示板(本件掲示板AおよびB)は,原告が対抗言論を成就するには公平性を欠いているといわざるを得ない。

なお,“ジャーナリスト”が社会活動のために運営する電子掲示板において,公然と繰り返された人格批判ないし根拠のない不適切表現は,「報道被害」を構成する。<原告準備書面(7)>

(2)両者の言論手段は対等ではなかった

被告らは,「アホ」「低脳」「頭がおかしい」「病院がカバーできないタイプの異常者」 「狂人」といった侮蔑発言を用いて,自分らの優位性を周囲にアピールしつづけた。 <原告準備書面(6)>

一方,原告が批判的な表現を用いた際に,原告は,常に「客観的な根拠」を併記している<原告準備書面(5)>

このように,原告と被告らとの言論手段には大きな開きがあり,原告はまっとうな手法では名誉を回復することはできなかった。それどころか,センセーショナリズムを利用した被告今井の原告批判によって惹起させられたシンパの相手をさせられることによって,原告は,莫大な時間的,財政的また精神的な負担を強いられた。

(3)被告今井は,論点を過去に向けようとした

本件事件において,原告は常に論点を明確にしようと努力した。一方,被告今井は,ログのない原告が反論不能なことばかりを持ち出した。《甲陳述書(1) 4の(5)および(6)》

(4)信義誠実の原則について

本件訴訟が開始される前,原告は,被告らに対し,ログの有無およびログ提出の意志を再三確認した。しかし,これら原告の依頼に対し,被告今井は,茶化すばかりで,原告の問いかけに答えなかった。《甲陳述書(3)第1の2

また,被告らのログの提出の仕方は,極めて不誠実である。《甲陳述書(3)第1の3

さらに,本件訴訟において,被告らは,再三,「(原告による)改ざんのおそれ」を指摘しておきながら,本件掲示板B(ツリー式の被告今井掲示板)については,原告がインターネットに公開しているログを,自ら作成した書証として提出している。このことは,原告が第三者の著作権に配慮して伏字を使った箇所を照合することによって立証可能である。つまり,被告らが原告が提出またはインターネットで公開している証拠の信頼性を認めながら,訴訟においては,「(原告による)改ざんのおそれ」を指摘して,被告らに有利な心証を形成しようとしたといわざるを得ない。

以上のとおり,原告に対する被告今井の行為は,信義誠実を欠いていると言わざるを得ない。

3 原告陳述書(1)への修正および補足

原告陳述書(1)の9のxxiiiiに示したとおり,原告は,被告今井がたびたび「和*さんとこのウリ坊」なる匿名管理人を持ち出して責任逃れをしたことを立証しようと試みた。

  1. 2002年1月24日,原告は,疎外和*に電子メールで問合せをした。<甲70-1:ブラウザからの表示困難><甲70-2:甲70-1をHTML形式に変換>
  2. 6月4日 2002年4月1日と6月3日の2度,原告は,疎外和*に電話し,アポイントをとった。<甲71-1><甲71-2>
  3. 2002年6月11 4日,原告は,疎外和*と面会をした。<甲72:機会があれば提出する>
  4. 2002年6月10日,原告は,再度,疎外和*に電話をかけた。疎外和*は,「(ウリ坊は)何年も掲示板に投稿もない」「(ウリ坊とは)連絡もとれない」「今井がウソつこうが俺には関係ない」「(フリーウェイクラブの)非会員には教えられない」と原告に伝えた。なお,原告と被告今井が疎外和*が主催する掲示板(本件掲示板C)でやり取りしたことを前提とした原告の話しを,疎外和*は否定しなかった。<機会があれば提出する>
  5. 2002年6月11日,原告は,「首都高500円掲示板(本件掲示板C)」の後身にあたる掲示板で大谷昌弘についての情報提供を呼びかけた。《甲73
  6. 2002年6月1113日,原告は,被告今井が証拠として提出した掲示板の写しに大谷昌弘の電子メールが記されていることに気付き,大谷昌弘に電子メールを出し,証言を依頼した。<甲74-1:ブラウザからの表示困難><甲74-2:甲74-1をHTML形式に変換>

なお,原告陳述書(1)における日付の間違いをここに修正するとともに,時系列に並び替えた。

 

以上