平成13年(ワ)第15800号 損害賠償請求事件
原 告 野村 一也
被 告 今井 亮一 外2名
準 備 書 面 (7)
平成14年1月22日
東京地方裁判所民事部第18部ろB係 御中
原 告 野 村 一 也
公の場所における,ジャーナリストとして認知された職業人の言動について,次の通り弁論する。
1.被告今井は,交通ジャーナリストとして,広く認知されている。
(1)被告今井は,1990年12月初版の『交通取締りに「NO」と言える本』(恒友出版)を執筆し,交通ジャーナリストとして世に出るきっかけを作った。〈
甲54〉
(2)被告今井は,交通ジャーナリストとして,多数の出版物を執筆した。〈
甲52〉〈
甲54〉
(3)被告今井は,交通ジャーナリストとして,原作した作品を,週刊の漫画誌に掲載した。〈甲53の1ないし同4〉〈
甲54〉
(3)被告今井は,交通ジャーナリストとして,広く認知されている。
2.ジャーナリストに期待される公正さ,および,客観性について
(1)一般に,ジャーナリストは,客観的な視点から,公正な報道や論評を行うことが期待されている。
(2)被告今井は,ジャーナリストとして活動し,広く程度認知されている。
(3)したがって,被告今井の言動は社会的影響が大きく,被告今井は,自身の影響力を自覚して,慎重に発言すべきである。
3.ジャーナリストが主催するWEBサイトについて
(1)マス・メディアには,報道・言論(論評およびフォーラム)・娯楽・教育・広告といった機能がある。
(2)インターネットは,まだ普及過程であるが,新聞・テレビにならぶともいわれるメディアであり,とうぜん「報道機能」を持つ。
(3)ジャーナリストとして活動する職業人が,「報道機能」を持つWEBサイトにおいて行った言動は,報道または論評とみなすべきである。
(4)本件事件の舞台となった,「現場警察官への応援歌」では警察問題が,「月刊交通違反 on
the Web」では交通問題がテーマとなっており,娯楽や広告がその目的でないことは明白である。
(5)したがって,本件事件における,被告今井の言動は,職業ジャーナリストによる報道または論評とみなすべきである。
(6)なお,本件掲示板Bは,設置からわずか50日で1万アクセスを越える閲覧数があり《
甲36の2#352》,平成13年8月10日時点でまでに11万1千539回の閲覧数があった〈
甲55の1〉。したがって,本件掲示板Bの影響力は,ラジオやテレビ,または雑誌に準ずるといえる。
4.WEBページと掲示板について
(1)掲示板は,閲覧者が参加可能なWEBページだといえる。
(2)「報道機能」を期待されるWEBサイトに併設された掲示板は,報道または言論(フォーラム)の機能を持つと考えられる。
(3)被告今井が,「報道機能」を期待されるWEBサイトに併設された掲示板で発言した場合,それは,職業ジャーナリストによる報道または論評とみなすべきである。
(4)なお,被告今井は,WEBページにおいても,本件事件に関する言動を行っている。〈
甲43〉
5.報道被害
以上のように,本件損害賠償請求事件は,主として被告今井亮一の言動(報道または論評)によって原告が受けた「報道被害」について,原告が提訴したものである。