robot syndrome (ロボット・シンドローム)

なぜニッポンの巨大ロボットは“意思”を持たないのか?

 鉄腕アトムや人造人間キカイダーなどの等身大のロボットは、すべてが自分の意思で動きます。それに対して、鉄人28号をはじめとして数え切れないほど描かれた巨大ロボットは、ほとんどが人に操縦される設定になっている。

 人に操縦される巨大ロボットにはお約束がある。それは、操縦者にはある程度の安全が保障されているということだ。まず、鉄人28号やジャイアントロボといった遠隔操作型の巨大ロボットは、離れた安全な場所から遠隔操作できるので、操縦者はとうぜんのごとく安全だ。次に、マジンガーZや機動戦士ガンダムに代表される、内部に乗りこんで操縦するタイプの巨大ロボットは、かならず抜群の高性能を持ち、それによって操縦者の安全が確保されている。

 こうした巨大ロボットを描いたストーリーはニッポンの独断場であり、巨大ロボットを操縦するという発想そのものにニッポン特有のPOWER(権力)への憧れが存在するかもしれません。

海外の巨大ロボット THE IRON GIANT

日本製の巨大ロボット・ストーリーとは好対照な自分の意志で動く巨大ロボットのストーリー。
子供はもちろん、オトナの女性にも楽しめるはずだ。

 さて、巨大ロボットもクルマも「なかに乗り込んで操縦する」という点は同じだ。それ以外にも多くの共通点を持つ巨大ロボットとクルマに、“カッコ良さ”が求められるのは当然だろう。そして、巨大ロボットよりはるかに現実的な道具であるクルマは、「目的地に到着する道具」としての本来の用途以外に、見栄えの良いパーツを飾って楽しんだり、こころ安らぐ居場所であったり、そして自分の(運転)能力を試したり、またはステータスを誇示するために使用されます。

 ここからは、組織について考えてみよう。組織の中で多くの部下たちを自分の手足のように使うことは、ロボットやクルマを操縦することと多くの共通点が存在する(→マシーナリズム)。たとえば、上命下服が徹底された組織においては、(自分が責任をとることなく)部下を手足のように使うことが可能だ。さらに、自分のミスを部下になすりつけることによって、「安全性」を確保することさえ可能のようだ(→アカウンタビリティ)。

 また、クルマの場合は「オレのクルマは○○○馬力」「△△仕様だ」、組織の場合では「私の会社は東証1部上場企業だ」「本社が大手町にある」「資本金は××億円」などなど、スペック自慢の対象となる点も共通している。

 そして、組織のなかで絶大なPOWER(権力)を持つ者には、組織本来の目的を忘れて、個人の自己満足のために組織を操縦しようとする傾向があるようだ。彼らは「大きな組織を思いのままに動かしたい」という利己的な欲求を、“自己実現の欲求”というレベルの高い欲求であるかのように錯覚しているのだろう。しかし、この「大きな組織を自分の思いのままに動かしたい」という欲求は、峠のワインディングロードを爆走する若者たちの欲求とさほど変わりはないのである。





無責任の構造

不祥事の構造

権力と義務

ニッポンの巨大ロボット

表ウラの激しい社会



エマージェンシー・ルーム

フェアジャスティスプロジェクト

ニュートラル・ポジション