最終更新:2005/10/15

マジョリティ・ルール‐アリゾナ州政府の広報資料より‐

Establishing Speed Limits - A Case of "Majority Rule"


以下の文章は、ADOT公式サイト内のコンテンツ「Establishing Speed Limits  - A Case of "Majority Rule"-」 を翻訳したものです。

速度規制の策定 -マジョリティ・ルールのケース

はじめに
FOREWARD

「現実的な速度規制」の目的は、最適な道路交通サービスを導くことにある。いいかえれば、速度規制は交通工学の道具だといえる。
「現実的な速度規制」とは何なのか? 「現実的な速度規制」がどんな影響を及ぼすか、そしてどのようにして「現実的な速度規制」が策定されるのかを簡単にまとめてみた。

なぜ速度規制が必要なのか?
WHY SPEED LIMITS?

多くの市民は、合理的な方法で日常的な行動をおこなう。したがって、さまざまな状況下で良識的な人々がおこなう行動が、法規に反映される。そして交通規制は、常にさまざまな状況でのドライバーの行動に基づいて決められる。

一般に、大多数のドライバーの行動を反映した交通規制は成功していることが判明する、一方、独断的に大多数のドライバーを規制する法律は、大規模な交通違反を助長し、市民からの支持を失い、運転方法の好ましい変化を阻害する。これは速度規制において特に顕著だ。

速度規制は、アメリカの法制度に定着した基本的な概念に基づいている。

  1. 人と社会との関係に対する個々人の考え方が運転に反映されるものである。そして大多数のドライバーは安全で合理的な方法で運転する。
  2. 良識ある人による注意深く適切な普通の行動は、合法的であるとみなすべきである。
  3. 法律は、一般市民を守るため、また、ひと握りの人々の不当な行動を規制するために策定される。
  4. 大多数の同意と理解が得られなければ、法律は効果的に運用されることはない。

これら「基本的な概念」を、だれもがふつうに受け入れている。しかしイライラしているときなどには、しばしばこれら「基本的な概念」が忘れられて、それよりもずっと気楽な「誤った考え」に基づいて行動するのだろう。そうして:

  1. 速度規制によって、交通の流れを遅くするようになる。
  2. 速度規制は事故を減少させ、そして安全が確保される結果につながる。
  3. スピードリミットを上げることは、交通の流れを円滑にする。
  4. 道路と通行状況にかかわらず、どんな速度規制もそれがないよりは安全であるに違いない。

 

「速度規制を改正しても、その後のクルマの走行速度には大きな変化がない」ということは、研究者によって証明されている。そして、今も昔も研究の結論は同じだ。なお、発表された調査結果によれば、「公表されたスピードリミットと事故頻度との直接の関係」はみとめられなかった。もちろん短期的になら、スピード違反やその他の取締りがいき過ぎによって、(事故の)減少効果をみることはできる。

標準的な流れから完全にはみだした速度でクルマを走らせるような分別のない違反者を、コントロールするための合理的で通俗的な速度規制法であっても、警察機構がその法律を信任するとは限らない。

多くの人々が思っていることとは反対に、オーバースピードだけが事故の主要な原因ではない。現実、多くのスピード関連の事故が、極端に速い場合と、極端に遅い場合の双方で生じる、という専門的な意見の一致がある。

交通の流れにできるだけ一様性を作り出す必要性があることと、いわゆるスピード・トラップを排除する必要性があることは、交通エンジニアリングの専門家のあいだでは常識である。スピードトラップを定義するならば、 通りや道路が十分に広く、 直線さや滑らかさが満足に整った道路で、 ある程度の速度で走行する事が許される事に対しての障害物が最小限に抑えられ、 しかも視界の確保がしっかり得られる、 にも拘らず法律によって大幅に低い速度の規制がかけられた場所(道路)を言う。

現実的な速度規制について
WHAT REALISTIC SPEED LIMITS DO

現実的な速度規制は、さまざまな理由から公共な重要性がある。

  1. 大多数の行動が規制に反映されることによって、ドライバーは公共の秩序を遵守するようになる。
  2. 違反者は、合理的で分別のある速度を越えていることを強烈に自覚するようになる。
  3. 警察は(本来の目的に)効果的な取締りをするようになる。
  4. 交通取締りに向かうドライバーの敵意が最小になる。

非現実的な速度規制について
WHAT UNREALISTIC SPEED LIMITS DO

非現実的な速度規制は、次のように公共に影響を及ぼす。

  1. 大多数の行動を規制が反映しないので、ドライバーは規制に納得しない。
  2. 大多数のドライバーの運転が不法行為になってしまう。
  3. 警察が「スピード・トラップ」を設置しているので、ドライバーは警察対する敵意を最大にする。
  4. 観光客の目から見たドライバーは、地域に良くないイメージを作る。

策定された速度規制はどのくらい現実的なのか
HOW REALISTIC SPEED LIMITS ARE ESTABLISHED

セクション28-702が「エンジニアリングと交通調査の基礎上に、州ハイウェイシステムの速度規制の制定を認める。アリゾナ州は、このように法規の修正を発表した。

アリゾナでのスピード・ゾーニングは、85パーセンタイル速度において、この実行可能な速度規制は広く受け入れられる、という原則に基づいている。このスピードは、もちろん、「事故データ,道路,ジオメトリックスに密接な結果」として、このような因数に基礎づけられた下方への修正の適用を受けている。速度規制を策定する前に、答えるべき若干の質問がそうである:

  1. 道路セクションは、85パーセンタイル速度で走行するクルマが、安全な加減速をするのに十分な距離があるか?
  2. 道路の垂直・水平方向のアライメントは、85パーセンタイル速度で走行するクルマが安全に走れる程度なのか?
  3. レーン幅・交通量・路面の状態は、このスピードを受け入れられるか?
  4. 85パーセンタイル速度で移動している車が、安全でスムースに停止をすることができるか?
  5. 事故パターンは、85パーセンタイル速度<が適切ではないことを示しているか?>
  6. そのスピードリミットによって、信号を設置する必要が発生するか?
  7. 道路に隣接する施設が、おおきくクルマの流れを変えたり、渋滞を引き起こす可能性はあるか?

交通工学の見地から
ENGINEERING JUDGMENT

おそらくスピード研究でもっとも重要な要素のひとつ、しかし定義することがもっと難しいもの、それは交通工学の経験に基づいた工学上の判断である。仮にポリシーとガイドラインが完全であるとしても、エンジニアリングの判断を必要とするという特異性を持つというのが、スピード研究の常である。

あるエリアでのスピードリミットを上げるか、それとも下げるかの決定は、交通調査員の個人的な判断に基づくことがある。またサンプリングに十分な交通量のないエリアでにおいては、交通調査員のインプレッションに基づいて決定されているのかもしれない。

最終分析において、もし、何かの要素が85パーセンタイルスピードへの下方修正をするとしたら、それは調査員の工学的判断である。

すべての要素を熟考した後にスピードリミットを策定することによって、交通は最も安全で効率的なレベルで流れるのである。

参 照
CREDITS

This document is based on a booklet called "Establishing Speed Limits - A Case of "Majority Rule", published by the Arizona Department of Transportation.
「速度規制の策定 -“マジョリティ・ルール”のケース-」(アリゾナ運輸省)

翻訳の一部分は、Mr.T氏のヘルプよるものです。