公安委員会の正体 -警察一家の責任転嫁システム-

警察の紹介(HPやパンフレットや白書)には例外なく、次のように書かれている。
公安委員会は、 都道府県における警察行政の民主的運営、政治的中立性の確保の点で、 大きな役割を果たしています。

この説明のウラを返すと次のようになる。
公安委員会が機能しなければ、警察行政の民主的運営、 政治的中立性は確保されない。

警察の民主性や中立性の支えとなっているはずの公安委員会の正体をみてみよう。

■WHAT'S 公安委員会

 公安委員会制度は、警察の民主的管理と政治的中立性の確保を図るために戦後GHQが設けたものであり、法的な枠組は現在も残されている。 国には国家公安委員会、都道府県警察には都道府県公安委員会が設置され、警察の上級行政庁としてのそれぞれ警察を管理していることになっている。 この公安委員会制度が機能していないことは多くの人が知っていたが、2000年春頃まで、報道のアンタッチャブル・ゾーンであった。

警察庁のホームページを表示 国家公安委員会のホームページを表示
警察のタカリ構造について
交通取締りシステムについて

■都道府県公安委員会の現状

 神奈川県警不祥事後、批判の矛先は公安委員会へも向けられ、そして2000年春、神奈川県警はWEB上に県公安委員のプロファイルを公開した。さらに公安委員会制度全体への批判が高まったことや、都道府県の情報公開条例が施行されていくなかで、ネット上での都道府県公安委員会の詳細についての情報公開は劇的に進んでいった。

ネット上に公開されている都道府県公安委員のプロファイル

■都道府県公安委員のお仕事

 委員は警察本部内では「先生」と呼ばれる。確かにそろってそうそうたる肩書きをお持ちだ。しかしこれらの肩書き(本職)と併せて公安委員会のお仕事が可能なのだろうか?

北海道での公安委員長への報酬は年間402万円。 他の委員への報酬は288万円である(いずれも平成9年度実績)。 広範な警察責務を管理する仕事への報酬としては安すぎる。名誉職としての報酬設定額であることは明らかだ。また数々の功績を残された先生方にとっても、公安委員になるそれまで深く関与することのなかったであろう広範な警察所掌事務を管理するための知識を蓄えることは、失礼ながら年齢的にかなりしんどいのではないだろうか。 北海道公安委員会(011-251-0110内2124)に電話すると北海道警察総務部に繋がる。また北海道では公安委員会に所属する職員はひとりもおらず、先生方は毎週水曜日午後1時からの会議に来るだけである。なお会議は必ずしも毎週行われるわけではない。

 都道府県警察公安委員会は知事の所轄であるが、知事は都道府県警察に対して直接の権限を持っていない。つまり都道府県警察は都道府県公安委員会を間に置くことによって、都道府県の直接的な関与を退けている実態がそこにあるのだ。 都道府県警察は都道府県の財源によってその活動費の大部分を賄いながら、都道府県が警察活動に直接関与できないシステムとなっているのである。そしてお飾りとなっている都道府県公安委員会の存在が警察の実態を市民に伝わりにくくし、警察には「公安委員会が決めたこと」といういい訳を与えているといっても過言ではない。
 公安委員会制度によって「民主的な運営」が可能になるはずの警察システムは、公安委員会そのものが都道府県警察を管理するだけの機能を持たない場合には、「民主的な運営」などできるはずもないのである。そして上命下服が徹底された典型的なピラミッド型組織である“警察一家”に委ねられたさまざまな権限は、だれにも関与されずに階級の高い警察職員のものとなっているのである。
 都道府県の直接関与を避けることによって、地域差を無視した全国一律の警察運営を行う、恐ろしく中央集権化された組織がニッポン警察なのである。そしてその権限は警察庁長官に集約されている。