公開される交通事故統計の偏り(かたより)
テレビや新聞では毎日のように「交通事故の悲惨さ」が報道される。そのなかで大型トラックの過失による死亡事故はとても多いようだ。市街地では歩行者への注意不足による事故、高速道路での追突事故。 しかし警察の取締りは、乗用車の速度違反をターゲットとした取締りが中心だ。そして、取締り情報に詳しいトラックやタクシーのプロドライバーが、こうした取締りに捕まることはほとんどないのである。 |
1 |
と |
2 |
と |
3 |
大きいのはどれ? |
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─── | ─── | ─── | ||||
1 |
6 |
20 |
もちろん「分子だけ」を見比べても正解にはなりません。しかし、警察が都道府県別死者数で順位をつけることは、「分子だけ」で大小を決めようとすることなのである。
なぜ幼稚なトリックを使ってまで、警察が死者数にこだわるのか? その理由は『○○人が死んだ』と表わした方が、事故の悲惨さをイメージさせ易いからにちがいない。そうすることによって、「警察は悲惨な交通死の削減に努力しています」と胸をはって予算拡大を主張することができるのだろう。
いくら衝動的殺人が多発しようが、強姦が蔓延しようが、それらに対して警察がなし得る施策の予算はたかが知れている。最も予算が取れるのは交通施策なのである。
参考ファイル |
⇒反則金のゆくえ -速度規制と警察の公共事業- |
⇒道路延長距離、免許保持者数、自動車登録台数の各項目別事故状況 |
⇒風俗係官室 -性犯罪の現実- |
■トラックが引き起こす死亡事故について
第一当事者 |
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第二当事者 |
出展/『交通統計年鑑 平成10年度版』 財団法人 交通事故総合分析センター
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※過失の大きい順に、第一当事者、第二当事者とされる 乗用車4,359件に対し、貨物車は2,580件であった。 乗用車と貨物車では数が違うので登録台数当たりを算出する。 乗用車が4,990万台、貨物用が1,921万台として、1万台当たりの死亡事故件数は 乗用車が0.87件、貨物車は1.34件となる つまり貨物車は乗用車より54%死亡事故が多いことになる。 注) ここで貨物用とした分類には貨物用軽自動車も含みます
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自動車保有台数 (平成10年)
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■事業用車両の高い事故発生率
保有車両1万台当たりの交通事故件数 (平成10年) | |||||||||||||||||||
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全車両/自家用車両、事業用車両、自動2輪、原付、ミニカーの合計 自家用乗用車/軽乗用車、ミニカー含む ※貨物車両に軽貨物は含まない |
事業用貨物車は自家用普通乗用車の2.5倍!
事業用乗用車は6.5倍!
■トラックや事業用車両に対する警察の取締り
この相対的に危険な車両である大型トラックに対して、警察が一体どのような対策をしているか見てみよう
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自動2輪/小型2輪、軽2輪、原付2輪 |
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出展/『交通統計年鑑 平成10年度版』 財団法人 交通事故総合分析センター |
貨物車両に対する取り締まりの消極さ
貨物車両全体への総取締り件数993,852件は、自家用普通乗用車の18.6%しかない
飲酒運転の取り締まりのターゲットは自家用普通乗用車のようだ
飲酒運転の取締りの全体(酒酔い2,899、酒気帯び333,900、合計336,799)の65%が普通乗用車である
営業用車両に対する取締り件数の少なさ
普通乗用車で見ると営業用車両に対する取締りは自家用車の10分の1以下