上記の者に対する業務上過失傷害被告事件について,当裁判所は,検察官渡邉卓児及び弁護人小嶋干城(国選)各出席の上審理し,次のとおり判決する。
被告人を禁固1年に処する。
この裁判確定の甲から3年間その刑の執行を猶予する。
訴訟費用は被告人の負担とする。
被告人は,平成16年2月6日午前8時ころ,業務として普通乗用自動車を運転し,横浜市中区本町五丁目49番地先の信号機により交通整理の行われている丁字路交差点を元町方面から桜木町方面に向かい,時速約50キロメートルで直進するに当たり,同交差点の対面信号機の信号表示に留意し,これに従って進行すべき業務上の注意義務があるのに,これを怠り,同信号表示が赤色(青色左折可矢印)の灯火信号を表示していたのに,青色直進可の灯火信号を表示しているものと誤信し,同信号表示を確認せず,漫然前記速度で同交差点内に進入した過失により,折から,左方道路から進行してきた山*幸*(当時32歳)運転の原動機付自転車を認め,急制動するとともに右転把したが間に合わず,自車左側後部を前記原動機付自転車に衝突させて,同人を同車もろとも路上に転倒させ,さらに,自車を対向車線に進≪ここまで1ページ目 - 改行 - ここから2ページ目≫出させて,その前方の同交差点桜木町方面出入口に設置された横断歩道上を北仲通方面から弁天橋方面に向けて横断歩行中の佐**政*(当時66歳)をして自車との衝突を避けるため反転を余儀なくさせて同人を路上に転倒させ,よって,前記山*幸*に全治約10日間を要する左膝挫創,両下肢挫傷の傷害を,前記佐**改憲に加療約33日間を要する左膝部挫傷兼擦過創の傷害をそれぞれ負わせたものである。
括弧内の甲乙の番号は,証拠等関係カード記載の検察官請求証拠番号を示す。
被告人の当公判廷における供述(ただし,後述する措信できない部分を除く。)
証人山*幸*,同保*尚*(ただし,いずれも後述する拝借できない部分を除く。)及び同佐**政*の当公判廷における各供述
司法巡査作成の実況見分辞書(甲1ないし4。ただし,甲1の7丁目の7行目, 8丁目の7ないし9行目,11行目頭から「衝突」の前まで,甲2号証の2丁目
6,7行目,甲3号証の2丁目6,7行目を除く。)
司法巡査作成の速度換算捜査報告書(甲5)及び謄本作成報告書(甲15)
検察事務官作成の捜査報告書(甲16)
医師大**作成の捜査関係事項照会回答書(甲17,ただし不同意部分を除く。)
医師木*準*助(甲6)及び同大**(甲9)各作成の診断書
なお,本件交差点内の状況及び位置関係等については,その正確性自体については疑いのない司法巡査作成の実況見分詞書(甲1)添付の交通事故現場見取図によることとし,これを別紙として添付する。
被告人車両は,元町方面から桜木町方面に向かい時速約50キロメートル毎時(制動痕から算定した速度は約53.28キロメートル毎時)で直進し,本件交差点に進入した。被告人車両の対面信号のサイクルは,@赤色・直進可矢印35秒,A赤色・直進左折可矢印35秒,B黄色・左折可矢印3秒,C赤色・左折可欠印43秒,D黄色3秒,E赤色15秒であり,本件事故は,AからCの終了までの間た生じた。
山*幸*運転の原動機付自転車(以下,「山*車両」という。)は,弁天橋方面から元町方面に向けて右折進行するため,本件交差点手前の停止線付近で信号待ちのため停止し,その後発進して本件交差点に進入した。山*車両の対面信号はS赤色91秒,◎青色40秒,S黄色3秒であり,被告人車両の対面信号がC赤色・左折可矢印となった3秒後に山*車両の対面信号がF青色となるため,3秒間双方の対面信号が赤色となる状態が存する。また,本件交差点の桜木町方面出入口に設置された横断歩道の歩行者用信号の表示は,山*車両の対面信号機がF青色になると同時に青色となる。
証人保*は,信号及び事故目撃状況につき,「桜木町方面から来て,弁天橋方面に右折するつもりで本件交差点手前の右折車線の先頭に停車した。直進方向は渋滞していた。普段三,四台目だと一度に右折できないので,信号の変わり方を意識して見ていた。視力は両目とも1.5で信号表示ははっきり見えて≪ここまで3ページ目 - 改行 - ここから4ページ目≫いた。最初の対面信号は赤色直進可であり,右の方に数名のOLがいてそちらを見た際,信号A〔証人保*の右方にある本件交差点桜木町方面出口付近の歩行者用信号機〕が目に入り,次に信号B〔山*の対面信号機であり,証人保*からは左斜前にある。〕を見た。この信号が赤から青に変わるのを見た。警察で信号Aが赤から青に変わるのを見たと話したが,OLを見たときと混同していたと思う。よく考えてみると,信号Bで見たふ信号の下3分の1くらいは見えた。その後,左にある歩行者用の信号機が青色なのを一瞬見た。それから元町方面(正面)に目を向けると,原動機付自転車が視界の右に入ってきた。原付は,対面信号が青に変わってすぐに好スタートで発車した。先頭のタクシーはゆっくりだったが,原付はいい加速で,二,三秒あるかないかの一瞬のことで,10から20キロメートル毎時だったと思う。原付が発車するのをみたとき,元町方面から車が来たのが視界に入った。もう停止線は越えていて,60キロくらいと思う。原付とぶつかると思っていたら,ぶっかった。原付の前タイヤが,車の左側面にぶつかり,後輪が浮いたような形になった。衝突後,原付は横倒れになったが,右か左かは覚えていない。ぶつかる前に原付が転倒したということはなかった。車は衝突後,最初私の方に向かってきて,(車から見て)右に弧を描くように歩道の方へ走っていった。車を目で追うと,歩道にいる初老のおじいさんが,驚いて転んだか何かでしりもちをついた。山*の対面信号機が青に変わってから初老のおじいさんがしりもちをつくまではあっという間で,例えて言えば一,二秒くらいであり,五,六秒まで早まなかったと思う。」旨供述している。
証人保*は,被告人とも被害者らともそれまで面識がなく,意図的に虚偽の 供述をして一方に荷担する動機等は見当たらず,比較的良好な視認状況で事故状況を目撃しており,基本的には信用できる内容というべきである。ただし,証人保*が左斜前の山*の対面信号機が青に変わるのを確認し,その後,左手の歩行者用信号機を見てからほぼ正面を向いた際に山*車両が視界に入ってき≪ここまで4ページ目 - 改行 - ここから5ページ目≫たのであれば,厳密な意味で対面信号機が青になってから山*車両が発進したか否かについては山*車両の方向を見て意識的に確認した事柄ではないため,十分視認できていない可能性があり,山*車両を認識した時点でその対面信号機が青であったことからの推測が混入している疑いがある(また,同人の司法警察員に対する供述調書〔弁10〕では,青に変わったのを確認した信号機について公判と異なる供述をしている。)のや,他の事情とあわせ検討する必要がある。その余の点について,同証人の供述に特段疑いを差し挟むべき事情はない。
証人佐**は,「この日の天候は晴れで,私め視力は両目とも2.0で老眼であり,信号ははっきり見えた。通勤のため合同庁舎の方から桜木町方面に向かい横断歩道をわたろうとしたが,点滅していたので一緒にいた友達2人を止めた。対面の信号機が赤になり,青に変わって一瞬青を確落してからわたった。信号が青に変わってから一歩踏み出すまでにコンマ何秒かはあると思う。友達もほぼ同時にわたり始めた。わたり始めたとき,一瞬足下の縁石を見て,正面を見た。歩き始めて,顔を上げたら左斜めの方から車が向かってきた。歩き始めて数秒,三,四歩くらい,縁石から1.5か2メートルくらいだと思う。車のフロント部分が見えた。一瞬左によけようと思ったが友達がいるので,左回りに身を翻して歩道に向かって逃げた。二,三歩で歩道に戻ったが,縁石に左足がつまずいて歩道上に転んだ。前のめりになり,両手をついて,左膝を路面にぶつけた。痛かった。それから座った状態で膝を抱えていた。しばらく立ち上がることができなかった。ズボンを上げてみると左膝から少し血が出ていた。
被告人の車は私の右側,歩道に乗り上げて停車した。その時は,痛かったが大丈夫だと思っていたが,後日痛みが強くなったので受診した。」旨供述する。
証人佐**は,被告人とも山*とも本件以前に面識はなく,被告人を陥れ,山*をかばう内容の虚偽供述をする動機等もなく,また,供述する内容も,信号待ちの歩行者の行動として自然なものであって,特段疑いを差し挟むべき事≪ここまで5ページ目 - 改行 - ここから6ページ目≫情はない。被告人と同証人との会話(弁7)についても,公判廷における供述の信用性を左右するごとき内容ではない。
次に,証人山*幸*は,「原付を運転し,弁天橋方面から元町方面に右折するつもりで本件交差点にさしかかり,倍号待ちのため停止線付近で止まった。止まっている間,対面信号を見ていた。対面信号が赤から青に変わったのを見て,10から20キロで発進した。信号か変わってから二,三秒だと思う。発進するとき,一対面信号が青だったので左右は確落しなかった。交差点内で,被告人車両が交差点に進入してくるのに気付いた。60から60キロくらいだったと思う。ぶつかりそうだと感じ,避けようとして反射的にハンドルを右に切った。プレーキはかけなかった。被告人車両を避けることかできず,衝突した。被告人車両の左後方のタイヤ付近に,原付の前輪部分がぶつかった。私は,ぶつかってから左側に転倒した。ぶつかる前に転倒したということはなかった。この事故で負ったけがでは左膝が一番ひどかった。」旨供述する。
証人山*の供述は,信号が変わってから二,三秒で発進したとする点など,佐**供述や後記の事故状況を前提とすると後記のとおり不自然な点も見られるのであり,事故状況の検討と併せてその信用性をさらに検討するが,青信号になってから発進したか否か以外の点については,特段不自然な点もなく,自己に有利に被告人に不利に供述していることも窺われない。
被告人は,「山*車両は衝突前に進行方向右側に自ら転倒した」旨主張(弁7「陳述書3」)する。
まず,被告人車両の左側面後部ドア下部には,地上高約46センチメートル,長さ約42センチメートの擦過痕があり,左後輪がパンクしていることが認められる(甲1,弁7・9)。他方,山*車両は,前部カウルが破損,脱落し,前輪がハンドルに対して左方に傾いている状態であることが認められるが,左右両側面とも顕著な擦過痕は見られない。
これを前提に検討するに,右側を下にして原付が転倒したのであれば,山*右膝よりも左膝の挫創が酷いことと矛盾はしないまでも整合的ではないし,右側を下にして転倒した原付が前輪から被告人車両に接触するばあい,減速しない状態で転倒して右側面を擦過した上,前輪が傾くよう変形させる衝突の際にも右側面が路面との間で強く擦過したことになるが,山*車両の右側面(甲2添付の写真6)にはそのような擦過痕は認められない。路面にも転倒後の衝突を窺わせる擦過痕は認められない。また,山*車両が被告人車両左側面に衝突して前輪が傾くなどした後に左側を下にして転倒したという場合には,速度の減少等の後に転倒したのであるから,山*車両の左側面部に重大な擦過痕が見られないことと整合する。そして,山*,保*とも,山*車両が転倒前に被告人車両と衝突した旨述づており,これは上記の山*車両の状況とよく符合しているのであり,十分借用することができる。
したがって,山*車両は,転倒前に被告人車両と衝突し,その後左側を下にして転倒したと認められる。
以上の証拠関係からすれば,事故状況,特に信号表示と各車両の位置関係の認定については,佐**供述(証人佐**が歩道から三,四歩進んだ地点で被告人車両の危険を感じており,時間感覚のみでは不正確さを免れないlことに比して,位置及び行動による記憶として信用性は高い。)に基づき信号表示と衝突時点の関係を推課し,これから信号サイクル及び各車両の速度を加味して過失の前提となる事実を認定するとともに山*及び保*の各供述との関係を検討することとする。
まず,佐**は,歩行者用信号が青色信号表示に変わってから歩行し始め,三,四歩,約1.5ないし2メートル進んだ位置で,被告人車両を左斜め前に≪ここまで7ページ目 - 改行 - ここから8ページ目≫認めているところ,これがほぼ本件事故(衝突)直後ころの状態であると考える。人の横断歩道での歩行速度が経験則上概ね秒速1メートル程度であること,及び佐**が対面信号機が青色表示に変わってコンマ何秒かして横断をしていることからして,佐**が被告人車両を認めたのは,佐**の対面信号機が青色となって二,三秒後と推定され,同信号機が青色となるのは被告人対面信号がC赤色・左折可矢印になって3秒後であるから,本件事故は,被告人対面信号がC赤色・左折可矢印に変わってから約五,六秒後に生じたと推定される。
この点に関し,弁護人及び被告人は,事故後被告人車両が佐**のもとへ達するまでに約1秒を要したと主張するが,佐**が,被告人車両を目撃してから回避行動をとっていること,被告人がハンドルを右に切りつつ急制動をしていることや制動痕の位置からして,佐**にとって被告人車両のフロント部分が目にとまり左に避けようと感じるような被告人車両の向きは,事故直後で少なくとも制動痕の半ばより前の車体の向きであると認められるから,佐**が被告人車両を発見した時点は衝突直後と見られるのであり,上記に想定した時間の幅の範囲内というべきである。その他,本件事故がC赤色・左折可矢印となってからより短い時間で生じたとの疑いはないし,佐**の行動からすれば,それ以上の時間経過後に発生したとするのも不合理であって,認めがたい。
次に,衝突位置(甲1添付交通事故現場見取図B地点で,被告人の座席)と,本件交差点の元町方面入口手前の停止線(被告人車両が停止すべき位置)との距離は,約33.2メートル(甲1添付の交通事故現場見取図によれば,おおよそ11.9〔@〜A〕+41.0〔A〜B〕−19.7=33.2)と認められる。
以上から,被告人車両の速度は,制動時にあっては約53キロメートル毎時(秒速14.7メートル)であり,本件交差点に進入するころ,被告人車両はほぼこの速度で走行していたと認められるから,被告人に不利益とならないよ≪ここまで8ページ目 - 改行 - ここから9ページ目≫う時速約50キロメートル(秒速約13.8メートル)として被告人車両の位置を推測すると,本件事故の約五,六秒前,すなわち,被告人の対面信号機がC赤色・左折可矢印に変わった時点では,衝突地点から約69メートルないし82.8メートル元町方面方向の位置,停止線の手前約35.8メートルないし49.6メートルの位置に被告人車両が位置していたと考えられる。また,時速約50キロメートルの場合,空走時間を1秒と仮定しても,経験則上,30やメートル程度で停止できることは明らかに認められる。(一般的に顕著な事実である制動距離としては,時速約50キロメートル,乾燥路面の摩擦係数を0.7として見ると約14.1メートルであり,空走距離〔約13.8メートル〕との合計は約27.9メートルとなる。)
そうすると,上記数値を運転席の位置で算定していることから車体の長さを考慮しても,制動措置を講じれば停止線手前において停止できる距離をおいて被告人車両が走行していた時点で,すでに被告人の対面信号はC赤色・左折可矢印となっていたと認められるから,被告人が,前方を注視していれば,C赤色・左折可矢印を認めて制動措置を講じ,本件交差点手前停止線で停止でき,また,そうすべき注意義務があったことが明らかである。このことは,山*の見切り発車の有無に関わらない。
被告人は,捜査段階及び公判において,おおむね「毎日通る道路で,その日は急いでいた訳でもなく,体調も悪くなく,いつもより余裕を持って進んでいた。私の判断では,これは行ける状態だという記憶で交差点に入った。信号の表示は明確に記憶している訳ではないが,青が表示されていて,自分は行ってもいいという理解で進入した。だから,バイクが1台ぽつんと出てきたとき,何でお前出てくるんだというのが私の記憶です。」旨供述する。しかしながら,被告人自身,対面信号機の表示を明確に記憶している訳でもなく,その他上記事故状況の認定に反する証拠はないのであるから,被告人の供述は,赤信号を殊更無視した訳ではないという意味では否定できないものの,赤信号を看過し≪ここまで9ページ目 - 改行 - ここから10ページ目≫ていないという意味では信用できないというほかない。
弁護人は,山*車両の停止位置から衝突位置までの進行に約5.36秒を要すると主張するが,この前提は,等加速を前提とする点で経験則に反し失当である。しかしながら,前記の事実状況からすれば,山*車両は,交差点手前の停止位置から衝突位置までの約18.2メートル(実況見分調書〔甲2〕の交通事故現場見取図ア〜イ〜ウ)を二,三秒で進行したことになるが,この距離は加速後の時速約20キロメートル(秒速約5.6メートル〔山*供述,保*供述とも概ね10ないし20キロメートル毎時としている〕)で進行したとしても3.25秒を要する上,山*が対面信号が青に変わるのを見てから発進するまでに通常は若干の反応時間を要することからすれば,山*車両が信号表示が青色に変わってから急発進したとする保*供述を考慮しても,山*車両がその対面信号が青に変わる前に発進した疑いは残るとするほかない(それ以上の加速度があるとすることは,特段の立証なき以上認めがたい。)。そうすると,信号が青色に変わってから二,三秒後に発進した旨の山*供述は,佐**供述から認められる上記の経過からするとにわかに信用できないし,保*供述は,前記のとおり,山*車両の発進時を特定するには足りないと言うほかない。
なお,被告人車両の対面信号機が赤色に変わって5秒以上も経過している状態において,交差道路から他の車両等が進入していることとは,経験則上ありうることであって,情状面はともかく,被告人の予見可能性を左右することではないから,被告人の過失の成否を左右じない。(一般的に顕著な算定式によれば,普通乗用自動車が先頭で発進する通常の加速のばあい,加速度0.2g(gは重力加速度9.8m/s2)程度が通常(顕著な事実)であり,そうすると,山*が被告人車両を発見するまでア〜イ間11.8メートルで加速したとして,計算式√2×(加速に要した距離〔メートル〕)/0.2gによれば,おおむね3.47秒を要し,この場合の加速後の速度が時速約24.4キロメートルであるが,これにイ〜ウ間を走行する約1秒を加えると,4秒余りを要することとなる。)
佐**の傷害について,傷害の有無及び被告人の行為との因果関係を検討すると,被告人がハンドルを右転把し,対向車線に被告人車両を進出させたため,佐**がこれを回避しようとして転倒したことについては,被告人車両の停止位置(甲1)からして疑いがない。
また,佐**が加療約33日間を要する左膝部挫傷兼擦過創を負ったことについては,診断書(甲9)のみならず,佐**が**病院にて診察を受けた際,膝蓋部に創のあとが見られたこと(甲17の1丁目)は,事故直後に少々出血していた旨の佐**供述と符合するし,佐**が膝の痛みを訴えるようになった経緯,同人の年齢等からして,優に認定できる。
被告人は診断書の信用性を争うが,一般論として愁訴のみによる診断があり得るとしても,上記外傷を伴った本件においては前提を異にしており,失当である。
弁護人及び被告人の主張は理由がない。
各被害者ごとに
刑法211条1項前段
各被害者ごとに
刑法54条1項前段,10条(犯情の重い佐**政*に対する業務上過失傷害罪の刑で処断)
≪ここまで11ページ目 - 改行 - ここから12ページ目≫
禁錮刑
刑法25条1項
刑事訴訟法181粂1項本文
本件は,赤信号看過により交差点で交差道路から進行してきた原付に自車を衝突させ,また,回避行動により横断歩道上の歩行者に転倒を余儀なくさせ,2名こ傷害を負わせた事案である。
赤信号看過の過失が重大であることは明らかであり,山*が見切り発車をしていた疑いはあるものの僅かなものであり,被害者佐**には特段の落ち度はない。各負傷結果は重篤ではないものの,被告人の対応から,宥恕は得られていない。
他方,被告人が犯行を争う点については,刑責を意図的に免れようというよりも,事故状況の誤解によると思われること,駐車違反による罰金前科1犯のほかには前科はないこと等の事情も認められるので,主文の刑を量定した上,その執行を猶予することとした。