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官営? 公営?
それとも公有財産の私物化?

駐車場などの収益物件を業者に任せる方法には、大きく分けると次の2通りがある。
a. 運営委託,貸付,使用許可
b. 管理委託
民間ではaをサブリースと呼ぶ。一定額で貸付けて、もうかった分を業者の取り分とするやり方だ。
このほかに指定管理者制度というやり方がある。これまで公益法人に無競争で委託されていた事業を、民間にも開放することでコストダウンを測るためだ。
本来、駐車場事業のように専門性の低い事業はすべて指定管理者として、料金は行政の財源とすべきだろう。しかし、指定管理者制度は基本的にb.管理委託が対象となっているために、サブリース駐車場がそのまま生き残るケースは多い。

なお、筆者は宅地建物取引主任者であり、10年以上の不動産経験がある。その経験で見聞きする標準的な民間駐車場に比較すると、お役所が外郭団体にサブリースを許している駐車場のなかには、利益供与といっても過言ではないものがあまりにも多い。

お役所の駐車場ビジネス〜湘南海岸編〜

高速道路化する一般道路

ドライバーが道路を利用するためには、ガソリン税や自動車税や重量税だけでなく、あちこちの道路で通行料金を負担しなければならない。道路にかかわるお役人たちは、これを“受益者負担”という。

ザ☆公共事業

真の“受益者”は特殊法人や外郭団体なのではないか? ―― こんな指摘もあって、道路公団改革が実行されたわけだ。民営化された後、道路改革の関係者はその成果をアピールしている。

でも抜本的な料金の見直しはないし、無料化の道筋もみえない。だからドライバーが道路改革の成果を実感することはできない。

いったい何が改革されたんだ!? ―― という疑問はさておき、ドライバーは、通行料金のみならず、駐車料金を支払う機会がふえている。

これは、道路関係法令の改正と、道路整備におおきな影響力を持つ外郭団体の“指導”などによって道路の構造が変えられていること、それから駐車違反の取り締まり強化によるものだ。

どうもお役人たちは、高速道路に飽き足らず、次は駐車場による“受益”をねらっているようだ。その実態を知るために、湘南海岸にドライブにでかけよう。

逗子海岸でボロ儲け

横浜の三ツ沢ジャンクションからスタートすると、まず横浜新道で新保土ヶ谷までの区間に200円、距離あたりの料金が日本一の横浜横須賀道路の逗子までに800円。それから逗葉新道で神奈川県道路公社に100円を支払うことになる。逗葉新道が終わり、トンネルを抜けると見えてくるのが逗子海岸だ。

海岸を左手に見ながら、国道134号線を江の島方面に向かっていると、ちょっとクルマを停めて景色をながめたくなるものだ。しかし、停められそうな場所はどこにもない。逗子海岸が終わりかけるころ、やっと山側に駐車場を発見するはずだ。神奈川県道路公社が運営する逗子海岸駐車場だ。

逗子海岸駐車場

収容台数はクルマ120台と大きいが、シーズン中の週末なら、運がよくないと停めることはできない。この駐車場の敷地は、神奈川県の土地で、それを公社が年間およそ200万円で借り上げ、料金収入を手にしている。その収益は年間2000万を越える。

これを1台あたりの駐車スペースでみると、月額1400円で仕入れた土地が1万4000円に化けるのである。仕入れの10倍は「濡れ手に泡」といってよいだろう。

ちなみに利用者の払う料金は、夏場だと1時間につき400円だ。1台分の駐車スペースで考えると、1ヶ月1400円の使用料は、たったの4時間の利用があればまかなえる計算だ。

材木座海岸でボロ儲け

トンネルを抜けると材木座海岸

ゆるやかに右にカーブしたトンネルを抜けると、そこに材木座の海岸が開ける。すぐに右側に駐車場を発見するはずだ。そこが材木座駐車場だ。

地方道路公社
地方自治体が設立する道路の管理運営のための特殊法人。いずれも駐車事業をおこなっている。
道路はさておき、駐車場事業については、どうにも納得がいかない。もとが都道府県の公有財産なのであれば、その料金収入は、県の収益とすべきではないだろうか。
運営に手間がかかるなら、その分の委託費を計算して、それを外郭団体に払えばよいのである。外郭団体をかませると、どうしても透明性が低くなるものだ。
ましてや、天下りが批判されている外郭団体に吸い上げられるのでは、利用者も納得しないはずだ。

ここも逗子と同じように、神奈川県道路公社が県の土地を借りて運営している。平成16年度の実績は、300万円の土地使用料に対し、3000万円を越える収益となっている。1台分のスペースを月あたり3300円で借り、それがおよそ3万5000円に化けるわけだ。

このほかにも、神奈川県道路公社は、茅ヶ崎西浜、稲村ガ崎、大仏前といった観光用の駐車場26ヶ所を運営しており、平成16年度の実績では、県に支払った土地使用料が約5400万円、その料金収入はおよそ4億円だ。土地使用料に払った額の7倍以上の収益を手にしているのである。

高速道路の次は駐車場なのか……

江の島でボロ儲け

坂ノ下駐車場

湘南海岸にもどって、ドライブを続けよう。

材木座海岸から江ノ島までの区間は道幅がせまく、いつも渋滞している。この区間にも坂ノ下と稲村ガ崎に神奈川県道路公社が県からのサブリースによって運営する駐車場が存在する。

江の島についたら、橋を渡って駐車場を探そう。江の島には、3つの大規模駐車場があるのだ。そのなかでもっとも立地に恵まれた場所にあるのが、江の島なぎさ駐車場だ。

第三セクター
バブルのころに〝民間活力の導入〟という大儀を掲げ、全国に乱立された。しかし、その多くは大量の焦げ付きを残しながら破綻した。
破綻の要因は、天下りした〝お役人の無責任さ〟にあるという指摘がある。

この駐車場は、湘南なぎさパークという株式会社が運営をしている。この会社は、神奈川県がおよそ40パーセントを出資した第三セクターであり、事業の柱は駐車場事業だ。

代表取締役の露木辰夫氏は、神奈川県立病院担当部長から、県住宅供給公社の専務理事、理事長を経て、この会社の代表となっている。露木氏をふくめ、常勤役員3人が県のOBで、ほかにも職員7人にOBがいる。

かながわ女性センター
(株)湘南なぎさパークは、まるで宮殿のような県立女性センターのなかにある。この建物は、およそ37億円をかけて江の島の島内に建てられた。宿泊や会議施設があるが、その利用料収入は年3500万円程度にすぎず、〝マニアのサロン〟と化している。

新江の島水族館から広がる県立湘南海岸公園の駐車場のほとんどと、江の島内の一等地にある駐車場を県から借り受けている。

神奈川県の都市整備局が任意提供してくれた平成16年度決算資料によれば、4駐車場(西部駐車場、中部駐車場、江の島なぎさ駐車場、鵠沼海浜公園駐車場)にかかる賃貸料は約4000万円で、その駐車料金収入は5億円を超えている。〝モト〟の12倍以上の収益をもたらしているのである。


江の島なぎさ駐車場

県立湘南海岸公園中部駐車場

県立湘南海岸公園西部駐車場

鵠沼海浜公園駐車場

辻堂海岸でボロ儲け

高速道路のような湘南道路

ついでに茅ヶ崎の方面にドライブを続けよう。

江ノ島から茅ヶ崎までの区間は、拡張工事が完了し、まるで高速道路のようだ。その一方、クルマを停める場所はどこにもない。

ようやく駐車場の看板を発見する。県立辻堂海浜公園の駐車場だ。この公園には、大規模なプールや県の交通安全協会が委託運営する交通公園などがあって、見所は多い。進行方向の反対側なので、Uターンして駐車場に入れよう。

辻堂海浜公園駐車場

県立辻堂海浜公園駐車場の収容台数は772台と大規模な平置きだ。シーズン中の料金は、1時間420円とけっこう高い。

この駐車場は、財団法人神奈川県公園協会によるサブリース事業だ。〝モト〟は、年間およそ1700万円ほどだ。これを1台分のスペースに換算すると、月1800円で借りていることになる。

そして気になる料金収入は、年間2億6000万円を超えている。1台換算で月2万8000円の料金収入をあげているのである。1800円が2万8000円、15倍以上だ…。

海浜公園の周辺道路
やたらと広い植樹帯の外側には、十二分な幅の自転車歩行車道

ところで、この公園の周辺道路はけっこう広い。それでも、やたらと広い植樹帯がその広い道路をせまくしている。

国道沿いに目を転じると、山側には雑木林が、海側の松林が広がっており、それをちょっと切り開くだけで、いくらでも駐車場が作れる。にもかかわらず、そうした駐車場はなない。あるのは、お役所が外郭団体に放出した有料駐車場だけだ。まるで外郭団体の駐車場がもうかるように道路が設計されたかのようだ。

この仕組みは、かつての道路公団が、サービスエリアでのレストランや売店を外郭団体に委託し、そこで外郭団体がボロ儲けをしていたことと全く同じだ。

財団法人神奈川県公園協会の理事長は神奈川県の県土整備局長が歴任しており、前専務理事の友井國勝氏は元県の防災局長だ。現在は元県北地域県政総合センター所長だ。さらに昨年常務理事のポストが追加され、現在、津久井土木事務所長がその座に座っている。

公園協会(公益法人)
国立公園は国立立公園協会、都道府県には都道府県公園協会、そして多くの市は市公園協会や緑の協会といった外郭団体に公園駐車場の運営を委託している。
あまりにも数がおおいので、全体像を示すことはできない。

その事業収入のほとんどは、公園駐車場の料金収入である。辻堂海浜公園を筆頭にし、神奈川県下に17ヶ所の公園駐車場を運営しており、平成16年度の事業収入約7億円のうち、じつに9割以上のおよそ6億5000万円を占めている。

協会の運営する駐車場のうち、代表的な3駐車場について、賃貸料と料金収入を抜粋した。

駐車場名 収容台数 料金収入 賃貸料
小型 大型 (年) 1台あたり(月) (年) 1台あたり(月)
辻堂海浜 772 2 2億6219万円 28,303円 1688万円 2,645円
恩賜箱根公園 123 0 2816万円 19,083円 390万円 2,645円
大涌谷 112 12 1億1935万円 88,807円 414万円 3,084円
ドライバーはいつもカモ
高速道路にも駐車場にも、ドライバーが望むのは、まず料金の安さだろう。不況だからなおさらだ。
一方、お役所はいつもコストは二の次だ。「安全」を錦の御旗にして、過剰な設備やサービスを盛り込んだデラックスな施設をつくっている。
道路のハードを司る国土交通省をはじめとする“道路一家”は、路外駐車場事業で利権の舞台を拡大する。
一方、 “警察一家”は、駐禁取り締まりの大儀を強固なものとし、強い警察を演じる舞台を獲得する。さらに路外駐車場の警備員で警備業界にうるおいを呼ぶこともできる。
こうした費用は、ドライバーの負担する高速料金や駐車料金にかならず転嫁されている。
大涌谷駐車場
財団法人神奈川県公園協会の大涌谷駐車場

大涌谷の駐車場が1台分のスペースで月9万円近い料金収入をあげていることに注目しよう。利用者が支払う料金は、何時間停めても普通車が520円、バスが1260円というフラットレートだ。特別に高いという印象はない。それでも1台分のスペースで月9万円近い料金収入があがるのである。

こうした高収益な公園駐車場の運営を任された公園協会は、全国に存在する。

お役所の不動産事業

国も地方も財政は大赤字だ。とはいえ、国も地方も、収益をあげられる不動産(公有財産)をたくさん持っている。なのに公有財産の多くは、おどろくほどの安値で外郭団体に貸し与えられている。そして○×協会といったお役所の外郭団体はボロ儲けをしている。

このようにお役所の外郭団体が委ねられる“路外駐車場利権”の構造は、高速道路でのPS/PA利権に酷似している。

ちがうのは、駐車場の運営主体が無数の小さな外郭団体や三セクで、それらがハエのように国や地方の公有財産にたかっていることだ。