警察白書は、バックナンバーから最新判までがネット上に公開されている。
の章より抜粋した。
- H14 駐車違反の取締りは、幹線道路、横断歩道やバス停留所付近等における悪質、危険性、迷惑性の高い違反に重点を置いて行っている。平成13年中の駐車違反取締り件数は181万6,870件であり、42万9,809台をレッカー移動した。
- H13 駐車違反の取締りは、幹線道路、交差点、横断歩道、バス停留所等における悪質・危険性、迷惑性の高い違反に重点を置いて行っている。12年中の駐車違反取締り件数は189万9,398件であり、45万7,753台をレッカー移動した。
- H12 駐車違反の取締りは,幹線道路の交差点,横断歩道,バス停留所等における悪質・危険性,迷惑性の高い違反に重点を置いて行っている。11年中の駐車違反取締り件数は215万1,006件であり,49万4,846台をレッカー移動した。
- H11 駐車違反の取締りは、幹線道路の交差点、横断歩道、バス停留所等における悪質・危険性、迷惑性の高い違反に重点を置いて行っている。10年中の駐車違反取締り件数は228万3,164件であり、約50万台をレッカー移動した。
- H10 駐車違反の取締りは、幹線道路の交差点、横断歩道、バス停留所等における悪質・危険性、迷惑性の高い違反に重点を置いて行っている。9年中の駐車違反取締り件数は241万2,844件であり、約54万台をレッカー移動した。
- H9 駐車違反の取締りは、幹線道路の交差点、横断歩道、バス停留所等における悪質・危険性、迷惑性の高い違反に重点を置いて行っている。 平成8年中の駐車違反取締り件数は、244万7,840件であり、約56万台をレッカー移動した。
- H8 駐停車違反の取締りは、幹線道路の交差点、横断歩道、バス停留所等における悪質・危険性、迷惑性の大きい違反に重点を置いて行っており、7年中の取締り件数は約253万件で、1日平均約7,000件であった。
- H7 駐停車違反の取締りは、幹線道路の交差点、横断歩道、バス停留所等における悪質かつ危険性、迷惑性の大きい違反に重点を置いて行っており、6年中の駐停車違反取締り件数は約280万件で、1日平均約7,700件であった。
- H6 駐停車違反の取締りは、幹線道路の交差点、横断歩道、バス停留所等における悪質かつ危険性、迷惑性の大きい違反に重点を置いて行っており、5年中の駐停車違反取締り件数は約290件で、1日平均約8,000件であった。
- H5 駐停車違反の取締りは、幹線道路の交差点、横断歩道、バス停留所等における悪質かつ危険性、迷惑性の大きい違反に重点を置いて行っており、4年中の駐停車違反取締り件数は約310万件で、1日平均約8,500件であった。
- H4 駐停車違反の取締りは、幹線道路の交差点、横断歩道、バス停留所等における悪質かつ危険性、迷惑性の大きい違反に最重点を置いて行っており、3年の駐停車違反取締り件数は、1日平均約8,600件となっている。
- H3 駐停車違反の取締りは、幹線道路の交差点、横断歩道、バス停留所等における悪質かつ危険性、迷惑性の大きい違反に最重点を置いて行っており、~
- H2 駐停車違反の取締りについては、交通流に障害を及ぼす幹線道路の交差点、横断歩道、バス停留所等における危険性、迷惑性の強い違反態様に最重点を置いて行った。元年の駐停車違反取締り件数は、1日平均6,164件となっている。
- H1 駐停車違反の取締りについては、交通流に障害を及ぼす幹線道路の交差点、横断歩道、バスの停留所等における危険性、迷惑性の高い違反に重点を置いて行った。昭和63年の駐停車違反取締り件数は、1日平均6,686件となっている。
―― 悪質性・迷惑性・危険性の高い違反を重点に取り締まっている。
毎年発行される『警察白書』には、いつもこう書いてある。
しかし駐車違反の取り締まり件数は、常に「駐車違反等」とひとまとめだ。本当に迷惑な違反なのかどうかを警察庁発表のデータから読み取ることはできない。
このように味噌もクソも一緒にしていながら「悪質性・迷惑性・危険性の高い違反を取り締まっている」と発表しているわけである。
そうして、民間委託による取り締まり強化をともなう法改正が実行された。その理由は次のように発表されている。
―― 昨今の厳しい治安情勢の下で、駐車違反取締りのための警察力が不足していたことなどから、違法駐車を十分に抑止することが難しい状況にありました。そこで、新しい駐車取締りの制度を導入することとしたものです。
本当に悪質性・迷惑性・危険性の高い迷惑駐車を取り締まっていたのだろうか?
そこで、駐禁取り締まりの詳細データを分析しよう。
なお、この詳細データは、警察庁がこれまで秘匿し続けてきたものである。
データの読み方
8種類の駐車違反
法定 | 指定 | |
駐車禁止 | 1.放置 2.非放置 |
3.放置 4.非放置 |
駐停車禁止 | 5.放置 6.非放置 |
7.放置 8.非放置 |
駐(停)車違反の種別は、次の3要素に分類することができる。
- 場所要素1:駐車禁止場所と駐停車禁止場所
- 場所要素2:法定禁止場所と指定禁止場所
- 方法要素:放置違反と非放置違反
2種類が3要素。つまり2×2×2=8種類の駐車違反が存在する。
警察発表の「駐車違反等」はこれを統合したものだ。
8種類のデータはわかりにくいので、3要素それぞれの内訳と推移をみていこう。
法定/指定
交差点のなかや、消化栓の前のような場所は、道路交通法に禁止であることが盛り込まれている。これが法定禁止場所だ。駐車禁止場所と駐停車禁止場所がそれぞれ定められている。
一方、標識などによる公示が必要とされる禁止方法が指定禁止場所である。
放置駐車
放置駐車という違反は、1991年に導入された。 その理由は次のように発表されている。「駐車違反の中でも危険性、迷惑性の大きい放置行為の防止を図るため」
非放置 | 放置違反 | |||
反則金 | 点数 | 反則金 | 点数 | |
12000円 | 2 | 18000円 | 3 | |
10000円 | 1 | 15000円 | 2 |
しかしながら、警察は、チョークでタイヤ・チェックして、一定時間後の検挙というやり方を全国一律としてきた、だから非放置違反で検挙されることは、まずなかった。
それゆえ、放置違反の導入は、たんなる罰則強化だったといってよいだろう。非放置違反の検挙数が極端に少ないこともそれを裏付けている。
駐車/駐停車
悪質性・迷惑性の高い取り締まりを重点にしたのであれば、駐停車禁止場所での検挙数が多くなるべきだろう。
しかし現実は、駐車禁止場所での取り締まりがほとんどだ。
このケース(↑)のように、本当に悪質で迷惑な違反車のドライバーは、すぐ近くにいるものだ。
取り締まり強化は妥当なのか?
以上のように、駐車違反の取締り件数は、長期的に減らされ続けてきた。そして、「悪質性・迷惑性・危険性の高い違反を重点に~」という警察発表を裏付ける要素は見当たらない。
何故これまで即検挙をしなかったのか?
チョークでチェックして一定時間後に検挙という取り締まり手法は、明文化されたものではない。つまり、法改正前でも即検挙はできたのである。全国一律でタイヤ・チェックをしてから一定時間後に検挙というやり方をしていたのは、単に警察内部規定や慣例で行われていたに過ぎない。
ちなみに、駐車違反場所には「5分以内」の規定があるので、まだタイヤ・チェックの理由はあるが、駐停車禁止場所に「5分以内」の規定は関係ない。それに、他の国でタイヤ・チェックのようなまだるっこいやり方をやっている国は存在しない。
本来、迷惑性を決定するのは、時間より場所であるはずだ。だから、本当に悪質性・迷惑性の高い駐車違反を取り締まるのであれば、まず駐停車禁止場所での即検挙をすべきであったはずだ。それなのに、全国の警察が足並みそろえてそれをしなかったのは、取り締まり強化の口実をつくるためだろう。
厳罰化のさきにあるもの
駐車監視員を動員しての取り締まり強化は、駐車場事業者をよろこばせる効果は絶大であるが、短時間の本当に迷惑な場所での違法駐車を抑止する効果はない。このことは、さらなる取り締まり強化をおこなうための“種”となるだろう。
◇
大問題なのは、警察がやるべきことをしていなかったにもかかわらず、法改正による取り締まり強化を行ったことだ。