この記事の取材元は北海道警察交通指導課であることを北海道新聞社社会部に確認し、北海道警察交通指導課**氏に確認したところ、「交通裁判」は札幌官簡易裁判書地下一階の常駐監察官室という北海道警察の一分室の呼出であるとのことでした。 「交通裁判」とは道路交通法を始めとする、いずれの法律・法令、条例・規則等にも明文化された文言ではなく、警察内部のみで通用させている文言である。
しかし、一般道民は「裁判」とは裁判所の権限において実施されるものと認識しており、北海道警察が「交通裁判」を称することで、あたかも北海道警察常駐監察官室の呼出が裁判所の権限において実施されていると、誤認させる結果をみることは明らかである。
今回の逮捕は複数回にわたる呼出に応じなかったことが、逮捕の要因であって、任意である反則金の支払をしなかったことが要因ではない。しかし、記事では反則金を払わなかった事由がフォーカスされており、反則金の不払い=逮捕をアピールする記事となっている。 道路交通に関して、日本では規制及び取締を警察が担っており、その規制の方向が公共の福祉に向かっているのか、それとも、ただ取締りしやすい方向に傾いているのか、また取締の方法が一般ドライバーの理解の得られる方法でなされているかについては、議論の多いところである。
今回の記事をさらっと読めば「反則金を払わなかったら逮捕される」と認識するのは当然であり、「交通裁判」と記すことによって警察は道路交通について司法権まで手中にあるかのように粉飾されている。このことは日本国憲法第三十二条[裁判を受ける権利]を脅かすものであり、警察法第二条2項「日本国憲法の保障する個人の権利及び自由の干渉にわたる等その権限を濫用することがあってはならない」に反している。
以下、私見であることをあらかじめお断りする。
北海道は車の運転のマナーが他府県と比べて悪いという評価は実証されているが、その原因を明らかにして、道路交通安全の施策が行われているとはお世辞にもいえない。北海道警察は制限速度違反を重視した取締りを中心に行い、市街地においては、交差点付近で客待ち駐車をするタクシーを横目に取締りやすい一般乗用車を取締る。
いつの頃からか、警察とドライバーは、取締るため取締られないためのゲームをするようになった。警察は危険か安全かは関係なく「違反は違反」と取締を厳しくしていき、ドライバーは警察に捕まりそうなことはしないが、警察のいない場所での無謀運転、取締りされにくい危険行為、他の車への障害行為を平気でするようになっていった。つまり警察の取締り自体が警察に捕まらなければ何をやってもよいという価値判断を育てているといえる。道路における安全運転とは、警察に捕まらないように運転することよりは、道路の状況によって臨機応変に対応することのほうが重要なことは明らかある。記事のように「違反は違反」とドライバーに有無を言わせず処分を受けさせることは警察のいない場所や方法による無謀運転を助長するのである。
記事においての昨年の一斉逮捕時と比較して77%増となったのは不況の影響ではなく、警察の規制および取締に対する警告であると感じる。警察権力に面と向かって争うことのできない一般市民のささやかな抵抗なのではないだろうか。今回の記事は刑事処分に関するものであるが、一般市民には行政処分と刑事処分があることくらいは知っているが、その内容をしっかり理解しているものはさほど多くない。
直接この記事に関連しないと反論されるかもしれないが、このふたつの処分はひとつの行為に対して行われ、処分のプロセスにおいて大きく警察の判断が関与するため、以下、行政処分に関する記述をする。 逮捕者の内訳の半数以上は駐車違反である。刑事処分をここまで執拗に追及する事は結構であるが、行政処分に関して、運転免許免許点数制度は違反者が違反事実を認めようが認めまいが、不服があろうがなかろうが関係なく、違反者の点数は減点されている。
また、法は九十日を超えない期間の免許の効力停止について、何ら被処分者に意見する機会を与えていない。 この行政上の不利益処分は憲法第三一条[法定手続きの保証]中の「刑罰」とは違うものなのであろうか。 憲法第十一条[基本的人権の享有と本質]において「この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与えられる」とされており、憲法第三一条をあわせて考えれば、過去の違反事実を処罰するのではなく、将来に対し、危険性の高い運転者を道路交通の場から排除しようとする、運転免許点数制度の行政処分も刑罰とされるのが当然であると考える。
事実上、現場の警察官の判断によって決められる行政処分が憲法に反するかどうかを争うつもりはないが、現場の警察官が交通取締によってなし得る、違反者への不利益処分(減点)という権力の行使の重みを理解させることを求める。